病気のはなし

かぜと抗生剤

いわゆる「かぜ」に抗生剤を出すかどうか。十年ほど前までは、小児科の外来では風邪の診断で抗生剤(抗生物質・抗菌薬)を処方するのはごく一般的でした。けれど、ここ最近はその風潮にも変化が見られています。

そもそも抗生剤とはどんな薬なのでしょうか?抗生剤は抗生物質・抗菌薬とも言われ、細菌をやっつけたり・増えるのを防ぐ薬です。細菌と一般的な風邪の原因となるウイルスとは全く別物なので、ウイルス感染による風邪ひきには抗生剤は無効といえます。

ただし、小児における細菌感染症、例えば溶連菌感染症・細菌性肺炎・中耳炎・尿路感染症などは抗生剤による治療の対象になるので、病気の時に何がその原因なのか?ウイルスなのか細菌によるものなのか?を見極めることが大切です。

以前は、小児科クリニックで感染の原因を見極める検査を短時間に結果が出る形で行うことは難しかったのですが、ここ最近の医療の進歩で、少量の採血で炎症の数値を測定し感染の原因を推測することが可能となってきました。また、溶連菌やインフルエンザ・アデノウルス・RSウイルスなど小児にかぜ症状を引き起こす細菌やウイルスの感染の有無を短時間で判定できる検査も増えました。このような医療機器・検査をうまく使えば、必要な患者さんに必要な抗生剤を使え、患者さんにとって適切な治療を受けられるメリットがあります。

ウイルス感染に抗生剤は必要ありませんし、不必要な抗生剤を使いすぎると、薬剤耐性菌という、抗生剤が効かない細菌をつくる原因となります。我々医療者はきちんとした診断のもとに抗生剤を出す必要がありますし、親御さんも「風邪の治療に必ず抗生剤が必要」という認識があれば、それを見直す必要がありそうです。

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