病気のはなし

アレルギー

食物アレルギー①

子供さん、特に赤ちゃんのアレルギーで真っ先に頭に浮かぶのが食物アレルギーではないでしょうか。食物アレルギーの有病率(どれくらいの割合の人が食物アレルギーか)は乳児で10%、3歳児で5%位で、保育所でも1クラスに数人の食物アレルギーのお子さんがいる計算になります。

食物アレルギーのお子さんは、原因の食物を食べると、蕁麻疹や湿疹(皮膚症状)・唇や口の中の痒み(粘膜症状)・喘息(呼吸器症状)・嘔吐や下痢(消化器症状)などが出ます。一般的に食べてから症状が出るまでの時間が短いほど、強い症状の出ることが多いです。逆に、湿疹は食べた翌日や翌々日に出てくることがあり、食物アレルギーと気付かれていないことがよくあります。

乳幼児期の食物アレルギーで一番多いのは卵アレルギーで2番目が牛乳、3番目が小麦です。卵は断トツの一位でこの時期の食物アレルギーがあるお子さんの8〜9割は卵アレルギーを持っています。大きくなると甲殻類やピーナッツ・種実類(クルミ・アーモンドなど)・果物などのアレルギーも増えてきます。

食物アレルギーはなぜ起きるのでしょうか?人間の体には免疫と言って、体に異物(ウイルスや細菌など)が入ってきたときに排除する働きがあります。食べ物も異物ですが、これを排除すると栄養を体に取り込めないのでそれを排除しない仕組みがあります(免疫寛容)。食物アレルギーのお子さんでは、この免疫寛容がうまく働かず、食べ物を異物と認識して蕁麻疹などの様々なアレルギー症状が出てしまうのです。

乳児湿疹がどんどんひどくなって、血液検査をしたら卵アレルギーがわかった。離乳食でゆで卵の黄身を食べたら蕁麻疹が出た。患者さんは様々な症状でクリニックを受診されます。お子さんが受診された時、医師はまずその症状が食物アレルギーによるものであるかを判断し、食物アレルギーの疑いがある場合は、卵や牛乳など原因食物を推測します。お子さんの診察と親御さんからの詳しい問診を頼りに行います。そして確認のためにアレルギー検査(当クリニックで行っているのは抗原特異的IgE抗体を測る検査)を行います。この検査の結果はクラス0〜6までで0は陰性、1は疑い、2以上は陽性で数字が大きくなるほど、アレルギーの原因物質に対してたくさんの抗原特異的IgE抗体を持っていることになります。

ただし検査の解釈には注意が必要で、この検査で陽性=アレルギー症状がでるとは限りません。検査の数値・年齢・症状などを参考にして原因を絞り込みます。また検査をする時期ですが、あまり月齢が小さいとアレルギーがあっても数値が上がらないことがあり、当クリニックではおおむね生後4〜5か月以降で行うようにしています。

赤ちゃんに食物アレルギーがあると、離乳食を始める前から湿疹がでてくることがあります。これは主に母乳からアレルギーの原因物質が赤ちゃんの体内に入るためで、卵アレルギーのお子さんではお母さんが卵を食べていると赤ちゃんに湿疹が出ます。では母乳中の抗原(アレルギーの原因蛋白)はどれくらいの量なのでしょうか?詳しく調べると、母乳中の抗原量は1mlあたり数10ngで(1n(ナノ)g=10億分の1g)で、赤ちゃんが1日1000ml母乳を飲んでも数10万分の1gという微量です。これほどの微量でもアレルギー症状がでるのが、乳児期の食物アレルギーです。そして母乳由来の抗原は量が少ないため、ほとんどの場合症状は湿疹です。一方、離乳食が始まって本人が例えば卵を食べると、体に入る抗原の量が多いために蕁麻疹や嘔吐・喘息など強い症状が出ることがあります。同じ食物アレルギーでも体に入ってくる量によって、症状が異なることがあり注意が必要です。

問診や症状・血液検査で原因がわかり当該食物で症状が出ているということであれば、治療の原則は原因食物の除去です。

幸いたいていのお子さんは、大きくなるとともに食物アレルギーは改善してくるため、症状・年齢・検査結果などから総合的に判断して、除去を解除していく時期を考えていきます。通常の経過で2〜3歳頃から、軽いお子さんでは1歳頃から解除できる場合もあります。(当クリニックではなるべく強い誘発症状が出現しないよう加工品を使いながら、また初めての食材では経口負荷試験を行いながら解除を進めていきます。)

 

※最近、食物アレルギーの経皮感作と原因食物の積極的な経口摂取による耐性獲得が言われております。このことについてはまた項を改めて掲載したいと思います。

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